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MIA MIA(東京・東長崎) ヴォーン・アリソン[街と人生が交わるカフェ]

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Article:Yuka Nakano
Pictures:Eisuke Asaoka

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お店を営む上で、「場づくり」をどう考えるかは、多くのシェフやオーナーにとって共通のテーマかもしれません。単においしいものを提供するだけでなく、人が集い、会話が生まれ、地域に根づいていく場所をどう育てていくか。

東京・東長崎のカフェ「MIA MIA」は、そのヒントを与えてくれる存在です。オーナーのヴォーン・アリソンさんは、カフェを「人と人をつなぐ場所」と表現します。お客様一人ひとりと会話を楽しみ、時には人生の転機となるようなきっかけをも作り出す、MIA MIAの「場づくり」とは。

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MIA MIAオーナーのヴォーンさん

カフェは人をつなぐ場所

MIA MIAを始めるときに奥さんと「心から挨拶ができるお店があったらいいね」と話していました。東京にはいいお店がたくさんありますが、みなさん自分の作業に集中していることが多く、店内で話しづらい雰囲気を感じることがあります。一方、私の地元のオーストラリアではお客さんとのコミュニケーションを大事にしているお店が多い。フランクな交流が育まれるお店づくりのために、MIA MIAのスタッフにはまず、挨拶を大事にしてほしいと伝えています。挨拶からお客さんとの会話を積み重ねていき、お店とお客さんとの信頼関係を少しずつ築いていくのです。

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スタッフにはコーヒー業界での経験は求めておらず人柄を重視しています。単に「カフェで働きたい」という人ではなく「MIA MIAで働きたい」という人を採用しています。常連のお客さんがスタッフになることもあります。マネージャーの海老原さんもその一人です。海老原さんが最初にMIA MIAに来たとき、とある“ジョン・レノン”(常連の意。ヴォーンさんは常連客を親しみを込めてそう呼ぶ)のお客さんと閉店時間まで、共通の趣味であるカメラの話題から人生観に至るまで話しをしていました。年配の方やお子さんにも自ら声をかけている姿に感動し、こちらから「うちで働きませんか?」と声をかけました。

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マネージャーの海老原 安さん

開かれたコミュニティが育むもの

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私たちが目指すカフェのあり方は、誰もが入ることのできるコミュニティです。常連の新井直之さんは、いつか自分の店を持ちたいという夢をMIA MIAで語っていました。「お店を開くのは難しい」と思っていたそうですが、MIA MIAでたくさんの人と出会って話しているうちに、彼の夢を応援してくれる人と出会うことができ、「Cadota」というお店を東長崎に開きました。

やりたいことや悩みごとがあるとき、すぐ近くに相談できる人がいると、思いがけない形で前に進むことがあります。MIA MIAでは、「誰かの悩みを聞きましょう」と大げさに掲げるのではなく、日々の会話の中で自然と本音が出て、気づけば誰かが力になっているという空気ができているように感じます。時々私のところにも、お客さんが何か悩みごとを解決した後に報告に来ることが多くて、「もっと早く言ってくれれば良かったのに!」と思うこともあります(笑)。

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MIA MIAの店内には、ヴォーンさんが大好きなコーヒー屋とのコラボハンカチが沢山飾られています。

最近、銭湯に行った時のことです。隣のおじさんがお風呂の入り方を親切に教えてくれたり、シャンプーの袋が開かなくて困っていると助けてくれたり。人と人とが話す場所、いわゆるサードプレイスと呼ばれる場が少なくなってきている中で、そのような“ちょっとした会話”で人と人とがつながることのできる場として、カフェは町の中で大事な役割を果たしていると感じます。

本当に困っているときに、お店でのちょっとした会話が人生にインパクトを与えてくれることもある。MIA MIAが目指しているのは、自然と人の悩みや喜びがこぼれ出るようなコミュニティです。

東長崎という町に根づく

東長崎はアーティストの町です。「トキワ荘」に代表されるような漫画文化の歴史があったり、楽器演奏が可能なマンションがあったり。ここでコーヒー屋をやれば、おもしろい人たちが来てくれるかもしれないと思って、お店の場所を東長崎に決めたんです。

東長崎という場所でアーティストのカルチャーを推進させるため、MIA MIA主催の音楽イベントを多数開催しています。カルチャーを広げることもカフェの一つの役割だからです。イベント会場は東長崎の自転車屋さん、カフェ、美術館など、普段ライブをしないような場所で開催することが多いです。5周年のイベントには2日間で5,000人以上のお客さんに来てくださいました。

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1枚目:ギャラリーI AM Tokyo前の畑/2枚目:ギャラリーI AM Tokyoに設置している貸本

MIA MIA近くのギャラリー、「I AM Tokyo」では畑や貸本をやっています。畑は奥さんの提案で始めました。年に2回、近所の子供たちと一緒にミニトマトなどの野菜を育てています。また誰でも利用することのできる貸本を作ったことで、自然と近所の人とのコミュニケーションも増えていきました。

5年間、お店を続けていく中で、私はやっぱり東長崎という町が好きだなと感じています。窓をオープンにした店構えはお店の声を町に響かせるために設計しています。「今日もMIA MIAは賑やかだな」という空気を町に吹き込み、この町に住む人々に「君は一人じゃないんだよ」という安心感を与えたいのです。カフェを起点に「こんにちは」の一言を交わすだけで、町の景色は変わる。そう信じています。

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ヴォーン・アリソン/Vaughan Allison

オーストラリア・メルボルン出身。東長崎のカフェ「MIA MIA」店主。カフェ経営に加え、モデルや音楽プロモーターとしても活動し、多角的にカルチャーを発信している。自身のライフスタイルブランド「COFFEE TIME WITH VAUGHAN」ではコーヒーショップとのコラボアイテム展開。コーヒー、デザイン、カルチャーを媒介に町における新しいコミュニティのあり方を探求している。



MIA MIA Tokyo

東京・東長崎に位置するカフェ。築50年以上の元ブティックを改装したレトロな空間で、コーヒー・食・音楽を通じたコミュニティづくりを大事にしている。店内にはキッチンと客席の境界がなく、スタッフとお客さんの距離が近い設計で、「人がつながる場所」として機能するサードプレイスを目指している。MIA MIAは、コーヒーだけでなく、クリエイティビティに根ざしたコミュニケーションの場としても知られており、定期的に音楽ライブやアートイベントを開催。また、地元の店舗やアーティストとのコラボレーション活動にも取り組んでおり、町と密接にリンクした文化拠点としての価値も発揮している。さらに、蔵前や北参道にも拠点を拡大し、カフェに宿泊機能を持たせるなど、発信力の領域を広げている。

住所:東京都豊島区長崎4丁目10ー1ー1F
電話:080-5029-7278
営業時間:8:00-22:00 *水 6:55~ラジオ体操!(月/火 Closed)
HP:https://www.mia-mia.tokyo/