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テイクアウトの歴史と紙袋の文化

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article & pictures : @kohei_ochiai

東京の蔵前エリアで、ハンバーガーショップ「McLean-OLD BURGER STAND-」をはじめ、ダイナーとパーラーの3つの店舗を営む落合浩平さん。デザインにこだわり、お店の世界観を作り込むことでお客さんを魅了してきたMcLean店主が考える、テイクアウトの楽しませ方。

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僕はお持ち帰り(テイクアウト)という文化が物凄く好きだ。確かにお店で食事をした方が運ばれてきたタイミングですぐ「いただきます」ができる。だがテイクアウトの良さは注文をするその瞬間、そして家に帰るまで楽しみが続くのだ。

お店をやっていると、週何回か食べに来てくれるお客さんや必ずテイクアウトで買っていかれる常連さんも存在する。「今度は店内でも是非~」なんて言葉をコチラから添えても次に買いに来てくれる時も必ずテイクアウト。なので全員が全員同じ理由で食事しているとは限らないと思っていて。もちろん美味しいものを食べたいという基本的なことは変わらないが、僕が言っているのはその先の理由。「テイクアウトで買って外で食べたいんだよな~」という漠然とした理由しかないのだ。

その理由なきテイクアウトをさらに楽しんでもらいたいという事を日頃から思っていて、自分の店のテイクアウトの紙袋や包み紙には特に気を遣うようにしている。ハンバーガーショップやピザ屋さん、はたまた街のお弁当屋さんにしても、袋やパッケージや包装紙までしっかりオリジナルでデザインされている。家に持って帰って「いざ食べよう!」の瞬間までお店というものが表現されているのだ。

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White Castleの当時の紙袋

ハンバーガーのルーツのアメリカでも、ハンバーガーショップに紙袋は必須。遡れば100年以上前くらいからその文化は続いている。僕の知る歴史としては「McDonald’s」というモンスターバーガーショップが頭角を現す更に前のお話。1920年代に立ち上がった「White Castle」という最古のハンバーガーショップ。この時代は一般層が外で外食するという概念があまりない為、家で食事をする事が多くなかなかハンバーガーというものを食べる機会がなかった。そこでWhite Castleは「BUY ’EM BY THE SACK」というスローガンを掲げ、購入したハンバーガーを紙袋でテイクアウトするというサービスを展開。そこから「ハンバーガー=紙袋でのテイクアウト」というフォーマットが出来上がったのだ。その後ハンバーガーショップでの「テイクアウト」というサービスは普及し、今現在も変わらぬスタイルとなっている。

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HAPPY MEALが変わるごとにデザインが変わっていた当時のアメリカのMcDonald’sの紙袋

そしてWhite Castleはもちろんの事、ほとんどのハンバーガーショップが紙袋などをオリジナルでデザインをしている。皆の知るMcDonald’sでは当時シーズンごとに、もしくはHappy Meal(日本でいうところのハッピーセット)が変わる度に紙袋のデザインを変えている。紙袋の正面や側面、はたまた底面まで楽しませてくれるギミックもあったりして、抜かりのないセンスがアメリカのハンバーガーショップならではでとても素晴らしい。やはり何の特徴もない無地袋から出して食べるのもそれはそれでもちろん美味しいが、袋から出す直前まで気持ちを高ぶらせてくれる、そんな紙袋を自分のお店では目指したい。

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当時のMcDonald’sの紙袋の底面

僕の経営しているハンバーガーショップも紙袋と包み紙を自分でデザインしている。僕が普段店舗に立っていない時、事務作業を同じエリアにある事務所でしているのだが、気分転換に外を出た時に自分の店の紙袋を片手に持っている方とすれ違う事がよくある。これが物凄く嬉しかったりするのだ。この人が注文して、ハンバーガーが出来上がって、この紙袋を持って家に着いて、紙袋を開けてカブリつくまでが1セット。そこの最初から最後までをちゃんと“ハンバーガーショップとして”このテイクアウトで表現したいのだ。

お店のロゴやデザインが印刷された紙袋の中から包み紙にギュッと包まれたハンバーガーが出てきて、公園や家で食べる瞬間は最高だ。それは街のお弁当屋さんなんかもそうだ。弁当箱にほかほかのご飯とミックスフライなどを入れ、蓋を閉め、オリジナルの包装紙を輪ゴムで「パッチン!」とした弁当は公園で食べるのに最高の食事と言えるだろう。僕は料理を盛り付ける器と同じだと思っている。高級フレンチをいただく時も、大きなお皿の真ん中にちょこんとのるキャビアやホタテに皿の縁を飾るソース、その上に散りばめられた金粉といったように、お皿や盛り付け次第でグンと味の印象が変わってくるし、気持ちを高ぶらせてくれる。

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カルフォルニアのIN-OUT-BURGERの紙袋

そしてハンバーガーはかぶりつく食べ物。口の周りを汚しながら食べるという意味で「スロッピージョー」という名前のハンバーガーも存在するほど。僕としてはハンバーガーとはこの食べ方が一番上品な食べ方だと思っている。ナイフとフォークを使うレストランスタイルのハンバーガーもあるけれど、そもそも一口で様々な食材が口に入る食べ物もあまり無い。なので一つ一つの食材が1ターンで口の中に入るので味付けも個々で調整をしている。ナイフとフォークで食べてしまうと味がバラバラになるし肉汁も野菜の水分も抜けてしまうのでオススメはしない。お客様の為を思い食べやすくカットしたり箱型の容器に入れたりするのはとても良い事かもしれないけど、ハンバーガーのテイクアウトはやっぱり「紙袋」、なんなら少し底が湿ってきても口の周りや手を汚しながら全ての旨味が凝縮したハンバーガーを頬張るのが醍醐味だろう。それがハンバーガーというものだし、そう伝えていきたいという思いが僕にはあるのだ。

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McLeanのWhite Castleの当時のオマージュ

<プロフィール>

落合浩平
東京都浅草生まれ。ハンバーガーに魅了され、アパレル業界から転身。2017年に「McLean-OLD BURGER STAND-」をオープンすると、2020年に「McLean -OLD FASHIONED DINER-」、2023年に「McLean -GOOD OL' PARLOR-」を立て続けにオープン。店舗の世界観が詰まった紙袋や包み紙の収集家でもある。
Instagram : @mclean_burger @mclean_diner @mclean_parlor
HP : www.mclean.jp