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食材のクリエイターたち: CAPUTO(4代目社長アンティモ・カプート)

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Article:Yuka Nakano
Picture:CAPUTO / モンテ物産株式会社

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1924年創業の製粉会社「CAPUTO(カプート)」。イタリア・ナポリの町中にある本社ビルには、毎日のようにピッツァ職人やパン職人、パティシエたちが訪れ、「こういう粉が欲しい」という相談を持ち込むという。小麦は同じ畑で育ったとしても、年によってその性質が変わる。そして職人が求める小麦粉も、つくるものによって異なる。だからこそカプートは、小麦のテロワールを分析し、使い手の声に耳を傾けながら、目的に応じた小麦粉を作り続ける。4代目のアンティモ・カプートさんに、職人たちとの対話から生まれる粉づくりと、その背景にある製粉の歴史を訊いた。

製粉の道に至るまで

カプート家の製粉の歴史は、2人の兄弟の帰郷から始まった。イタリア系アメリカ移民だったカルミネ・カプートとパスクワレ・カプートは、1924年にアメリカからイタリアのカプアへ戻り、結婚を経て、製粉所とパスタ工場を購入した。その同じ年、カルミネが若くして亡くなったため、事業はまだ21歳だったアンティモ(カルミネの息子)の手に引き継がれた。「事業の将来はナポリにある」と考えたアンティモは、1939年、ナポリ港にほど近いサン・ジョヴァンニ・ア・テドゥッチョの製粉所とパスタ工場を買収し、拠点をナポリに移した。これは小麦が荷揚げされる港に近いという点でも戦略的な選択だった。

1960年代、北イタリアでは工業的な大量生産を行うパスタメーカーが台頭した。そうした市場の変化を受け、カプート社は「パスタの市況はこれから厳しくなるだろう」と判断し、パスタと製粉の2つの軸のうち製粉に集中する方針をとった。

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創業当時のナポリの様子

製粉に専念すると決めてからは、品質の高い軟質小麦の製粉に力を注いだ。そして、1990年代にはピッツェリア向けの小麦に特化する。「これは会社の方針として決めたというよりは、市場の変化に自然と応じた結果です」とアンティモさんは言う。ナポリには昔から多くのピッツェリアがあり、ピッツァ市場が拡大するにつれ、カプート社の小麦粉も自然とピッツァ向けの商品が増えていった。この流れを後押ししたのが、ナポリの町との近さだ。ピッツェリアやパティスリーの職人たちと密接にコミュニケーションを取ることができる環境が、カプートの商品開発を支えてきた。たとえば、「ナポリピッツァ用に、たんぱく質が多く、吸水率が高く、弾力のある粉がほしい」という職人たちの声から生まれたのが「サッコロッソ」だ。

植物としての小麦を知る

職人が求める粉を安定してつくるには、原料となる小麦の変化を知る必要がある。小麦は自然のものなので、同じ畑で育っても年によって特徴が変わる。カプートでは、その違いを知るため、栽培の段階から小麦を見るようになった。小麦は産地や気候、土壌によって性質が変わる。タンパク質やデンプンの質や量も、育つ環境によって異なる。

2013年頃、「カンポ・カプートプロジェクト」が始まる。これは、南イタリアにおける軟質小麦のサプライチェーンを構築するというプロジェクトだ。カンパニア州、ラツィオ州、モリーゼ州、バジリカータ州に自社管理の畑を持ち、理想的な品質の小麦栽培に努めている。現在このプロジェクトは、南イタリア最大の軟質小麦の一貫したサプライチェーンへと成長している。

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アンティモさんはプロジェクトについてこう語る。

「小麦は、気候や土壌などによってさまざまな特徴を持つ植物です。タンパク質、デンプンの質や量も、産地や環境によって異なります。私たちはそうした多様な小麦を組み合わせることで、目的に合った小麦粉をつくっています。私たち製粉会社は、自然とピッツェリアの間に立つ存在です。小麦が育つ環境を理解したうえで粉をつくることに、大きな意味があると思っています。このプロジェクトを通して、ピッツェリア向けの小麦粉を作るにはこの品種が必要で、その品種はどの畑での栽培に適しているかということが具体的に見えてきました。毎年、季節や気候によって収穫される小麦の状態は異なりますが、栽培から得た知見をヨーロッパ各地からの買い付けにも活かすことで、安定した品質の小麦粉を作り続けています」

均一な粒が、生地の安定をつくる

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カプートが創業当初から続けてきた製法の一つに、小麦を粒の状態でブレンドしてから製粉する方法がある。この製法の最大のポイントは、小麦粉の粒を均一な大きさに仕上げられること。粒の大きさをそろえることで、生地を作った際に水分の吸収のバラつきを抑えることができる。

均一な粒に仕上げるために欠かせないのが、ゆっくりした製粉方法だ。小麦を砕く際の圧力を抑えるため、一度ローラーを通した際に得られる粉の量は少なくなり、その分、ローラーとふるいを通す回数が増える。同社によれば、一般的な製粉に比べ20~25%ほど多く時間がかかるという。「この製法で挽くことで、小麦が本来持つ風味や、タンパク質・デンプンをできるだけ損なわずに粉にすることができる。そのためには、時間をかけてゆっくり挽くことが不可欠なのです」。生産量が落ちる分は、機械の台数を増やすことで対応している。

イタリアでは、小麦粉を選ぶ際にW値やP/L値が一つの目安になる。W値は生地の強さ、P/L値は生地の抵抗力と伸展性のバランスを示す。タンパク質量だけでは分からない粉の性質を把握し、用途を考えるための指標だ。

今日の伝統は昨日の革新

ナポリピッツァには、EUの伝統的特産品保証「STG」として登録された製造規格がある。カプートの「サッコブルー・ピッツェリア」は、その規格に定められた小麦粉の条件に適合する製品として認証を受けている。

「今日の伝統は、昨日の革新です」とアンティモさんは言う。ババやパスティエーラ、スフォリアテッラも、今ではナポリを代表する伝統菓子だが、最初に生まれた時には新しいものだった。300年以上の歴史を持つピッツァも同じだ。新しく生まれたものが残り、受け継がれていくことで伝統になる。

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イタリア・ナポリの町の風景

「オーセンティックなイタリアの食文化を世界中に届けたい」とアンティモさんは話す。イタリア料理はすでに世界に広がっている。一方でアンティモさんは、その中には自分が考える「オーセンティック」なものとは異なる料理も多いと感じている。彼がここで言うオーセンティックとは、昔から家庭で作り続けられてきた料理のことだ。「そうした料理が広がることで、それぞれの文化がほかの人々に近づいていくと思っています」そうアンティモさんは語る。

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4代目社長アンティモ・カプート

<プロフィール>
CAPUTO
所在地:Corso San Giovanni a Teduccio, 55 - 80146 Naples, Italy
HP : https://www.mulinocaputo.it/ja/
Instagram: https://www.instagram.com/mulinocaputo/