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100人の仕入れリスト #006 NekonoME Cafe(Chat LuuME)

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Yuya Okuda(@okuda.desu

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製菓・製パンに携わる人の数だけ、その人にとって欠かせない材料や道具だったり、礎となっているような大切なものがある──。 常に仕入れリストに居座っているような必要不可欠で大切な材料を、製菓・製パンのシェフにいくつかご紹介いただき、それらの材料の用途や魅力、その材料にまつわる思いを語っていただくシリーズ企画『100人の仕入れリスト』。

今回お話を訊いたのは、“新しいカタチ”のお菓子屋さんとして、オンラインパティスリーブランド「Chat LuuME(シャルーメ)」を営むNekonoME Cafe(以下、ネコノメ)さん。店舗の規模や販売方法にとらわれない“新しいカタチ”のお店はどのように運営されているのか、そして独学でお菓子作りを研究し、その楽しさを動画やSNSで多くの人に向けて発信してきたネコノメさんにとって欠かせない材料や道具とは。

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<プロフィール>
NekonoME Cafe(ネコノメ)
2020年よりYouTubeにて、お菓子作り動画の投稿を本格的に開始。着実にファンを増やし、2021年9月よりオンラインパティスリー「Chat LuuME」を立ち上げる。ECでの販売のほか、百貨店でのポップアップや製菓学校での指導も行なう。現在のチャンネル登録者数は28万人を超える。     

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課題解決のために出したひとつの答え

Chat LuuMEを始めてちょうど2年になります。僕以外にパティシエは社員2人とバイトの子が3人、そして外部スタッフとしてフードカメラマンのさいだーさんに関わってもらっています。アトリエは普通のマンションの1室を借りていて、NekonoME CafeのYouTubeは自宅で撮っています。最近では毎月製菓学校のイベントで講師をしたり、東京や大阪の百貨店で積極的にポップアップも出したりしていたので、全然YouTubeの更新ができていません(笑)。YouTubeで紹介したいお菓子作りは無限と言っていいくらいにあるのですが、人が関わっている分Chat LuuMEのほうを優先しています。お菓子を作っている時が僕は一番楽しいので、アトリエに籠って注文の入ったお菓子をずっと作っている時間もそんなに辛くはないんです。

YouTubeやオンラインパティスリーという、パティシエとして新たな選択肢を選んだのにもちゃんと理由はあります。日本ではパティスリーっていう言葉自体に馴染みがないですよね。フランスなどの諸外国と比べて利用層は少ないですし、仮に金銭的余裕があっても、自分へのご褒美をするための候補先には挙がりにくいじゃないですか。どうしたら回らない寿司屋や焼肉店のような立ち位置になれるか、アパレルブランドのように常に必要とされるのか。「パティスリーのケーキってやっぱりいいよね」という共通認識を生むためにも、パティスリーを利用したことがない層に向けた活動が必要だと思ったんです。

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ガレット・ミルティーユを作るネコノメさん

福岡の製菓学校を卒業して東京で就職した時に、日本のパティシエが抱える厳しい問題が見えました。僕が就職したのは、世間的には一流と言われるホテルだったのですが、毎朝6時から終電近くまで厨房で働いて月給は20万円にも届かない。今はだいぶ改善されていると思いますが、個人経営のパティスリーに勤めた同級生たちに聞いても、朝から晩まで毎日のように働いて手取りが10万円程度。結局多くの同級生がパティシエを辞めていきました。

もっとパティシエのお菓子が評価される土台を育む必要もあると感じています。街中で見かける流行りもののマカロンが320円なのに対し、一流パティシエが作るマカロンが380円だったりしますから。そこはもうちょっと価値のあるものとしてお金をとってもいいんじゃないかな。そうでなければ、より大量生産できるお菓子に切り替えるか価格を上げない限り、削れるのは人件費だけになってしまいますから。たとえば、僕らが普段飲食店でお金を払っているのは味だけではないですよね。回らない寿司屋に行けば、このネタは職人さんが早朝から目利きで仕入れてきた特別なものなんだろうと想像できたり、目の前で寿司を握るその技量や手間暇も考慮したうえで納得した代金を払っていると思うんです。でもパティシエの場合は、お客さんがお菓子作りの過程を目にすることはほとんどないので、想像することが難しい。そういった意味でも、一個の小さなマカロンやカヌレにどれだけ時間と手間がかかっているのかを知ってもらうには、YouTubeで作る過程を見てもらうというのは有効な手段になり得ると考えています。

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essentials of NekonoME Cafe

  1. 1. タヒチ産バニラビーンズ & ブルボン種バニラペースト / KAEDEYA
  2. 2. バナナ フレーバー / ミコヤ香商
  3. 3. 純ゴールドアーモンドプードル / サガミ産業 & アーモンドパウダー / 丸菱
  4. 4. カフェリーヌ キリマンジャロ / 群馬製粉
  5. 5. 宮古島の雪塩 パウダー / パラダイスプラン
  6. 6. 15cmステンレス定規
  7. 7. スマートパックSM-02 / マ―ルス & 特注ダンボール・天地無用シール
  8. 8. 縦型無風スーパーフリーザー / ダイレイ

1. タヒチ産バニラビーンズ&ブルボン種バニラペースト / KAEDEYA

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うちで一番人気のカヌレに使っているのが、このビニールに入ったタヒチ産のバニラビーンズ。バニラビーンズはブルボン種が一般的で、タヒチ産はそんなに甘くないので使いどころが難しいのですが、カヌレとは相性が良くて使っています。バニラビーンズは仕入れた後もいくつかの乾燥の行程が必要なので、京都のKAEDEYAさんが作っているブルボン種の甘めなバニラペーストと使い分けています。

2. バナナ フレーバー / ミコヤ香商

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Chat LuuMEのシグニチャーと言われるくらい人気なのが、ガトーショコラ・バナーヌやチョコバナナブラウニーといったチョコバナナ風味のお菓子。バナナそのものは使用せずにフレーバーを使用しているのですが、ミコヤ香商さんのフレーバーが製菓学校の頃からお気に入りで、独立したら絶対に使おうと決めていました。

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写真 = さいだー

3. 純ゴールドアーモンドプードル / サガミ産業  &  アーモンドパウダー / 丸菱

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フィナンシェや焼き菓子には、グレードの違う二つのアーモンドプードルを使い分けています。サガミ産業さんのアーモンドプードルは、アーモンドの女王と呼ばれるスペイン産のマルコナ種100%を粉末にしたもの。丸菱さんのアーモンドパウダーはカリフォルニア州のセントバレー産のアーモンドをパウダー状にしたものです。

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写真 = さいだー

4. カフェリーヌ キリマンジャロ / 群馬製粉

コーヒー豆を超微粉砕したコーヒーパウダーでそのまま生地に混ぜて使います。もともとモンサンクレールという有名パティスリーの辻口シェフが使っていたので気になって使い始めたのですが、少量でもコーヒー本来の芳香やコク、苦味といった味が出て、おもしろい材料です。

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5. 宮古島の雪塩 パウダー / パラダイスプラン

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雪塩のパウダーは溶けやすいので、クリームに合わせたり生地に溶け込ませるのに最適。15%くらいがミネラル分なので、同じグラムで他の塩と比較したら塩味は弱いのですが、優しめに塩気が出るので、甘塩っぱい味のものには一番相性がいいんです。

6. 15cmステンレス定規

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パレットナイフのように切ったり塗ったり、カードみたいに擦り切ったり、粉末を寄せ集めたり、これ一本でいろんな役割を果たしてくれるんです。それにまだすごい機能があって、長さが測れるんです。お気に入り道具を訊かれた時の鉄板ネタです(笑)。

7. スマートパックSM-02 / マールス  & 特注ダンボール・天地無用シール

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オンラインパティスリーは配送作業もセットなので、梱包材選びも悩みました。最初の頃は高級感のある紙の梱包をしたり、プチプチを使ったりしていましたが、場所を取るしゴミにもなるので、最終的にエアー緩衝材に至りました。必要に応じてビニールにエアーを注入して緩衝材を作ってくれる機械が、ネットで探してみたら4万円くらいで見つけたので今は重宝しています。また、発送に使うロゴ入りのダンボールやシールも特注です。何度か改良を重ねて、よく出るカヌレやガトーショコラの箱がぴったり収まるように宅配60サイズにしてあります。

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8. 縦型無風スーパーフリーザー / ダイレイ

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アトリエには業務用冷凍庫の他に冷凍ストッカーが2つ、低温の棺桶型のストッカーがあります。お菓子は焼成後すぐに冷凍庫で急速冷凍して、その後にストッカーに移してストックしておきます。冷凍庫には霜取り機能が付いていたりドアの開け閉めで、中の温度がわずかに上がってしまいます。冷凍室の温度が上がるとお菓子の品質が下がってしまうので、万全を期して温度が一定のストッカーに移します。生ケーキは-40℃設定のストッカーに、焼き菓子は-30℃に。冷凍の管理はスタッフみんなで徹底しています。

よく「冷凍なのに美味しい!」って言われることがあるんですが、「冷凍=美味しくない」という謎の風潮が僕にとっては敵ですね。なんとなく冷凍にした時点で味が劣化すると思い込んでそういう発言をする人がいますが、曖昧にしておくことが僕は嫌いなんですよ。このお菓子はこう作るべきだってみんな当たり前のようにしていることでも、その理由を意外とみんなわかっていなかったりする。僕は「なんで?」って思ったことは一個一個その理由を調べないと気が済まない。子供の頃のなぜなぜ期が今も続いているみたいな感じです(笑)。でも、偉い人から直接これはこうなんだって言われると、無条件に納得してしまうのかもしれませんが、僕は現場経験も長くないし、上司のような存在もずっといないのでそれがかえってよかったのかもしれません。

やりたいことを叶えるために

今後オンラインパティスリーという選択肢も増えてくるかもしれませんが、どんな形であれ独立するということは、言ってしまえば起業ですよね。その意識が欠けている人が多い気がしていて、けっこう危険だと思っています。従業員を雇えば責任も増えますし、組織を作ることの難しさを僕は日々感じています。それ以前に、いざお客さんからお金をいただくとなると、怖くなると思いますよ。僕にとってはまだマルシェに出るほうが気持ち的には楽なんです。既に作ってあるお菓子を陳列して、実際に現物を見て買っていただくので。オンラインパティスリーの場合は受注生産なので、場合によっては対応できなくなる恐れもある。SNSで紹介したカヌレの投稿が伸びたことで注文が殺到して、アトリエにある1台の小さなオーブンで600個のカヌレを1週間延々と焼いていたこともあります(笑)。

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今はChat LuuMEとYouTubeで精一杯ですが、今後はリアル店舗も持ちたいんです。店舗という場所があることでイベントもしやすくなりますし、仲間のパティシエや友人たちが何かイベントをやりたいって言った時に、自分が提供できる場所を持っていたらおもしろそうだなって。他にもやりたいことはいっぱいあって、いつかバターサンドの専門ブランドも出したいと思っています。チーズケーキ屋、ロールケーキ屋、プリン屋といった、何かひとつのお菓子に特化したブランドが最近増えてきていますが、僕もああいうブランドを出したい。

結局のところ僕がやりたいことは変わらずお菓子屋さんなので、お店やブランドがいくつあってもいいんです。お菓子屋さんを始める動機としては趣味の延長なので。でも趣味感覚ではやっていけないこともわかっているつもりです。全部自分でやるには限界があるし、これからはもっと人に頼っていかないと先に進めません。そのためにもまずは、人気漫画の主人公のように仲間集めから始めていこうと思います。

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Chat LuuME
HP : https://chat-luume.com

YouTube : NekonoME Cafe【ネコノメカフェ】
Instagram : @nekonomecafe
Twitter : @NekonoMECafe

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