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100人の仕入れリスト #003 Kristina Ganea(BROD)

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製菓・製パンに携わる人の数だけ、その人にとって欠かせない材料や道具だったり、礎となっているような大切なものがある──。
常に仕入れリストに居座っているような必要不可欠で大切な材料を、製菓・製パンのシェフにいくつかご紹介いただき、それらの材料の用途や魅力、その材料にまつわる思いを語っていただくシリーズ企画『100人の仕入れリスト』。

今回話を訊いたのは、東京・広尾にあるマイクロベーカリー「BRØD(ブロード)」店主のクリスティーナさん。デンマークで慣れ親しんだサワードウブレッドを中心に、市販の酵母や添加物を一切使用しないオーガニックかつヴィーガンのパンを提供するBRØDには、日本に暮らす外国人を筆頭に、北欧スタイルのパンやオーガニックなものが好きな多くの客が訪れる。クリスティーナさんが目指すパンとはどのようなものか、そのために欠かせない材料とは何か、話を訊いた。

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クリスティーナ・ガネア(Kristina Ganea)
デンマーク出身。2018年に夫ヘンリックさんの仕事の転勤を機に、自身の仕事を辞めて家族でデンマークから東京に移住。オーガニックで身体にやさしいパンを家族に食べさせるために、国産小麦粉をはじめとする材料のリサーチやパンの勉強をしながら自宅で毎日パンを焼き続け、2021年6月にマイクロベーカリー「BRØD(デンマーク語でパンの意味)」を始動。2022年12月には広尾駅から徒歩数分の場所に店舗をオープン。

身近な人のために始めたパン作り

デンマークはパンが中心の食生活なのでどこにでもパン屋がありますが、ここ20年くらいは健康志向や菜食志向の高まりから、サワードウブレッドやヴィーガンパンを扱うパン屋が増えています。健康のことを考えるなら、食べ物から身体をととのえてあげるのが最も効率的だと思いますが、デンマークと比べて日本ではオーガニックな食材がなかなか手に入らないのが悩みでした。

私がパン作りを始めたのは日本に来てからです。きっかけは娘が学校給食に出る白パンを食べるたびにお腹を痛めていたことでした。私たち家族が普段デンマークで食べていたライ麦パンが日本にはなかなかなくて、それなら自分で作ってみようと自宅でパンを焼き始めました。長時間自然発酵させて焼くサワードウブレッドを始め、全粒粉で種付き、繊維たっぷりのパンをいざ家族のために作り始めたら、近所に住む外国人の友人たちの間でも評判になり、次々に注文を受けるようになりました。次第に趣味の範囲を超えてきたこともあり、私のパンを待ち望んでくれる友人たちに安定して供給できるように、マンションの一画を工房用に借りて「BRØD」を始めました。

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最初は日々のオンライン販売やポップアップショップ、マーケット出店でしたが、昨年12月に2階建の小さなお店を広尾に構えました。 なぜ広尾だったかと言いますと、パン屋の仕事は深夜1時から始まります。 週末にマーケット出店する場合は前日の夜9時から仕込みを始めて翌朝7時頃までパンを焼いているので、 自転車で通える程度の距離にお店を構えたかったというのもありますし、 BRØDの既存のお客さんがこのエリアに多く住んでいたので、その方たちに焼きたてのパンを届けられると思ったからです。 お店を構えたからと言っても週末のファーマーズマーケットには変わらず出店していきます。 オーガニック製品や健康的なライフスタイルに興味がある、私たちと同じ価値観を持ったお客さんがたくさん来ますし、 そんな人たちと出会える貴重な場だと思っていますから。

BRØDのすべてのパンをオーガニックやヴィーガンにしているのは、誰もが食べられるものを作りたいからです。 原料にミルクを使う場合、牛乳を使えばアレルギーを持っている人は食べられなくなってしまうけど、 植物性のミルクならみんな食べられます。デンマークにはパンを人と分け合う文化があります。 どういうことかと言うと、パンをシェアすることは友達の証でもあります。 だから誰もが食べられるものであることが前提であり、なおかつ身体にやさしくて美味しいということが大切なんです。

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焼く直前の生地に仕上げのクープを入れるのはクリスティーナさんの仕事だ
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ライ麦の酸味が特徴のRUNGNIR

essentials of Kristina Ganea

  1. 1. 有機強力粉 / 田中製粉
  2. 2. ライ麦 シュロート / 大陽製粉
  3. 3. ドイツ製電動石臼製粉機 / Hao’s
  4. 4. 亜麻仁
  5. 5. スペルト小麦
  6. 6. トロアコンチネンツ61% / KAOKA
  7. 7. 『MEYERS BAGESKOLE Alle kan lære at bage』Claus Meyers / Lindhardt og Ringhof

1. 有機強力粉 / 田中製粉

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福岡産小麦100%の田中製粉さんは大好きです。高タンパク質なのもいいですが、オーガニックかつ石臼挽きなのがポイント。石臼製粉機は金属製のものとは違って機械による熱が小麦粉に伝わりにくいため、香りや栄養価といった小麦粉本来の質が変わりにくいんです。

2. ライ麦 シュロート / 大陽製粉

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日本産とドイツやヨーロッパ産のライ麦では香りや味、生地の感触がまったく異なります。

デンマークの伝統的なライ麦100%パンとしてBRØDでも定番のHeimdalを作るには、大陽製粉さんの「ライ麦 シュロート」でないと作れないんです。国内流通しているドイツ産オーガニックライ麦をずっと探してきましたが、2年もかけてようやく見つけられました。

3. ドイツ製電動石臼製粉機 / Hao’s

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石臼の効用は先ほど話したとおりですが、生地を混ぜる直前にこの電動石臼製粉機で小麦やライ麦を挽くことで素材本来の風味や栄養を保てるし、発酵スピードを早めることもできます。

4. 亜麻仁

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日本では油にして使う亜麻仁ですが、デンマークでは種子のままシリアルや朝食のパンに使います。食物繊維を多く含んでいるので、胃腸にもやさしい。 BRØDの定番のHeimdalやシードサワードウのOdinにはトーストした亜麻仁をヒマワリやカボチャの種などと一緒に満遍なくまぶして焼いています。

5. スペルト小麦

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スペルト小麦(古代麦)は発酵の過程でグルテンがあまり残らないので身体にも良いですし、 古代から同じものということで遺伝子組み換えされていないため今後もっと取り入れたいと思っています。 同じスペルト小麦でもサワードウとイーストで作るのでは、見た目は一緒でも中身は別物で、サワードウと合わせてこそ真価を発揮すると私は思います。

6. トロアコンチネンツ61% / KAOKA

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ヴィーガンのオーガニックチョコレートを日本で見つけるのは困難で、様々な卸先を当たってなんとか見つけられたのがこのKAOKAのチョコレートでした。今のところチョコレートはKAOKAしか使っていません。

7. 『MEYERS BAGESKOLE Alle kan lære at bage』Claus Meyers / Lindhardt og Ringhof

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デンマークでサワードウ人気に火が着いたのはここ20年と、割と最近です。サワードウの魅力を多くのベイカーに広めてきたのがこの本の著者のクラウス・マイヤーさんです。彼は料理人でありベイカーですが、誰もが家でサワードウを作れるようにこうして本も書いています。そのおかげで私も日本にいながらパン作りを勉強することができました。デンマークに帰省した際は、ベーキングスクールに通ったり工房に行ってデンマークの新しいパン作りを学んでいますが、私にとってはこの本が学校でした。

シェアこそがパンの喜び

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私にとって欠かせないものを語ってきましたが、最後はやっぱり人です。 BRØDでは現在7人のスタッフが働いてくれています。 最近では東京・谷中にあったベーカリーVANER(ヴァーネル)のベイカー齋藤朗人(さいとうあきと)さんが仲間に加わってくれました。 朗人さんが来てくれたことで、お互いの作り方を学び合って向上していくようないい雰囲気が生まれていると思いますし、 VANERという名を冠したパンも生まれました。 VANERの定番だったレーズンパンのレシピをVANERのヘッドベイカーの宮脇司さんにシェアしていただき、BRØDのサワードウとこだわりの材料を使ってできたコラボパンです。

パンは同じ材料やレシピで作っても、絶対に同じものはできません。そのことをわかっているベイカーたちは同業者に作り方を訊かれてもなんでも教えます。デンマーク人の私にとってパンはシェアすべきものですから、その作り方も含めて知りたい人にはどんどんシェアしていきたいと思っています。サワードウについても日本では最近になってようやく名前を聞くようになってきましたが、その魅力を今後もっと広めていきたい。店舗を構えた狙いでもあるんですが、 今後はBRØDの2階でベーキングスクールなんかもやっていく予定です。 今年も新しいことを始めていくので楽しみにしていてください。

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article/pictures=Yuya Okuda

BRØD
東京都渋谷区広尾5丁目4-20
080 9431 1907 (ENG)
070 4194 7013 (日本語)
10:00~16:00
日月定休
www.brod.jp


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