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唯一無二のアロマを持つカカオ豆を求めて

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Article:Yuka Nakano
Picture:CHOCOLATERIE DE L’OPÉRA/株式会社 立花商店

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左:二コラ・ド・ロワジー 右:オリヴィエ・ド・ロワジー

CHOCOLATERIE DE L'OPÉRA(ショコラトリー ドゥ オペラ)は、フランス・アヴィニョン郊外で家族4世代にわたりチョコレートと向き合い続けてきました。世界初のシングルオリジン・クーベルチュールチョコレートの発売や「セカンシア」と呼ばれる独自の焙煎技術の開発など、製法そのものから革新を重ねてきた、家族経営のメーカーです。テロワールの違いを尊重し、グアテマラ、ジャマイカ、パナマ、エクアドル、ドミニカ共和国、ベネズエラ、マダガスカル、ベトナム、パプアニューギニアの9カ国にある農園と長期的なパートナーシップを築いています。

「Opera」の名のもと、音楽のようにチョコレートを組み立て、少量でも意味のある製品をプロフェッショナル向けにつくる。その背景には、家族の歴史と、価格高騰や政情不安など変化の大きいカカオを取り巻く環境と向き合いながら、ものづくりを更新し続けてきた確かな思想があります。第4代マネージングディレクターのニコラ・ド・ロワジー氏に話を訊きました。

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Terroir Map

オペラ社のチョコレートは、家族の歴史そのもの

私の家族は、代々チョコレートの製造に携わってきました。オペラ社は、約30年前に父であるオリヴィエ・ド・ロワジーが創業した会社で、私は4代目にあたります。曾祖父のアドリアン・ブルジェはチョコレート製造所を設立し、祖父のギ・ド・ロワジーはフランス南東部のタン・エルミタージュでプロフェッショナル向けの高級食品や菓子を開発する部門に携わっていました。1980年代半ばまで、私たち家族はチョコレートに深く関わり続けてきたのです。

1995年、父は「CHOCOLATERIE DE L'OPÉRA」を立ち上げました。「世界で最もオリジナリティあふれる味わいのチョコレートをつくること」というカンパニーフィロソフィーは、今でも私たちの根幹となっています。さらに風味、クリエイティビティ、イノベーションという3つの柱を掲げ、私たちはプロフェッショナル向けのクーベルチュールに特化してきました。分野は狭くても、チョコレートづくりにおいては誰にも負けない専門家でありたい−−そういう思いが、今のオペラ社を形づくっています。

音楽のように組み立てるチョコレート

チョコレートをつくることは、音楽をつくる感覚に似ています。「Opera」という言葉は、どの国でも同じ意味で通じる。クラフトマンシップと、言語を超えた普遍性−−その両方がブランド名には込められています。

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オリジナルラインには原産国名を、クラシックラインにはラルゴ70%、アルカト66%、パッショナート62%など音楽に由来する名前を付けています。クラシックラインはすべてブレンドですが、それは異なる素材を組み合わせて一つの作品をつくる、作曲と同じ発想です。フランスの商品で「クラシック」というと「昔ながらの」というイメージがあるかと思いますが、私たちは「クラシック音楽」の文脈で用いています。

イノベーションを生み続ける

父が起こした最大のイノベーションは「シングルオリジン」という考え方でした。創設当初、チョコレートは複数産地のカカオをブレンドするのが当たり前でした。しかし父は、カカオには産地ごとに明確な個性があり、一つの原産国の豆だけでも十分に表現力のあるクーベルチュールをつくることができると確信していました。一つの原産国の豆だけでチョコレートをつくるという試みは、結果として私たちのものづくりの方向性を大きく形づくることになりました。

私の世代では、製法そのものに新たなイノベーションを起こしました。その象徴が「セカンシア」と呼ばれる焙煎技術です。焙煎香が強すぎるとカカオ豆本来の香りを損なってしまう。できるだけ本来の香りを損なわずに焙煎香を与えたいという目標のもと、セカンシアは生まれました。焙煎は一度ですが、その途中で温度を上下させる工程を二度組み込みます。焙煎中に糖(還元糖)とアミノ酸が加熱によって反応し、褐色化・複雑な香り・味を生み出すメイラード反応を精密にコントロールすることで、軽やかで奥行きのある香りを引き出します。すべての豆に適用できるわけではありませんが、納得のいく結果が得られたものだけを製品化しています。

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希少であること。それは責任でもある

私たちの強みは、希少なカカオを探しに行けることです。私も直接プランテーションに出向いてカカオ豆の香りを確かめています。すでに取引のあるプランテーションであれば農園の状況をチェックしに行き、新たなプランテーションでは豆や農園の状態について話し合いを重ねます。現地に行くことで、私自身も栽培農家がどのような仕事をしているのか確認することができます。栽培農家はカカオのエキスパートとして高度な訓練を受けているため、技術は日々進歩しており、プロトコルや製法についての解決策を一緒に考えることもあります。

例えばパナマのプランテーションでは、森林再生と生物多様性に取り組む農園と出会いました。パナマは森林伐採の影響を繰り返し受けてきた地域であり、カカオ豆以外の植物も植えることで生物多様性の維持や環境への配慮に力を入れています。このような農園の取り組みは地域の雇用や教育にもつながり、結果として安定した品質のカカオが生まれることにつながるのです。

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パナマの農園

一方で、政情不安や規制の問題から、扱えなくなるカカオ豆もあります。パプアニューギニア産カカオを使ったマドング70%はその一例です。マドング70%は強いスモークの香りという唯一無二の個性を持っています。しかし、そのスモークの香りをもたらす特定のカカオ豆が入手不可能となり、安定的な供給が難しい状況となりました。さらにヨーロッパではEUDR(欧州森林破壊防止規制)という新しい規制が施行されました。これは、森林伐採をした土地で栽培された農作物を使用してはならないという規制です。調達先の農園より規制への対応を行わない旨の通知を受け、安定的な仕入れは難しいと判断しましたが、それでも私たちは諦めずに、同じ香りを持つ新たなカカオ豆を探し続けています。

このように政情不安や環境問題が影響してくる部分もありますが、カカオ生産の中心地である西アフリカ産に限定して買い付けていると、私たちが大事にしているアロマの差別化が難しくなります。政治的・経済的に難しい部分もありますが、個性あるアロマを持つチョコレートをつくることを大切にしています。

私たちは現在9つの原産国と取引しており、ほぼ毎日、農園からカカオ豆が届きます。年間200以上のサンプルを評価し、選び抜いています。その背景には必ず生産者との対話があります。発酵や乾燥のプロトコルを農園と共有し、求めるアロマに近づけていく。農園との関係は、単なる取引ではなく信頼の積み重ねです。私たちはこれからも、クーベルチュールのスペシャリストとして、少量でもより個性的で、職人にとって意味のあるチョコレートをつくり続けます。それが、ロワジー家が代々受け継いできた哲学であり、オペラ社のチョコレートに込めた想いなのです。

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二コラ・ド・ロワジー(第4代マネージングディレクター)

<プロフィール>
CHOCOLATERIE DE L’OPÉRA
所在地:846 Chem. du Barret, 13160 Châteaurenard, France
HP : https://www.chocolateriedelopera.com/en/
Instagram: @chocolaterie_de_lopera