シュトーレンはドイツのクリスマスには必要不可欠なものです。白い粉砂糖に覆われたその姿は、おくるみに包まれたイエス・キリストに例えられていると言われています。
そういった背景からシュトーレンが誕生した当初、司教への献上品としてふさわしいとされていました。カトリックの教えでは、断食期間(クリスマス前の四旬節)はバターと牛乳を食べることが禁じられており、オーツ麦とイースト、水、菜種油だけのシンプルな材料で作られていました。しかし、そのそっけない味に不満を持ったザクセン（ドイツの地名）選帝侯エルンストと弟アルブレヒトが、1430年にローマ教皇へ「バター・牛乳摂取禁止令」の撤廃を懇願します。
この時は許可されませんでしたが、1491年に教皇インノセント8世が、教会の建設費用と引き換えに、菜種油ではなくバターの使用を許可する「バター書簡（Butterbrief）」を公布しました。この公布はザクセン選帝侯の宮廷でのみ有効だったのですが、これをきっかけに、バターと牛乳を使用したシュトーレンが公国全体に広まりました。
現在ではヴィーガン用のシュトーレンも販売されており、そちらにはバターの代わりにヴィーガンバターやマーガリン、植物油脂、植物性ミルクが使用されています。